#03 ハートじかけのオレンジに捧ぐ たとえば、「ハートじかけのオレンジ」は、ビーチ・ボーイズがその3年後に発表する「ゲッチャ・バック」を予見する曲調であり、また、後奏のSEは「ペット・サウンズ」的だという声も聞かれます。 たとえば、「ハートじかけのオレンジ」のBメロは、ジャン&ディーンの「渚のガール・ハント」(I FOUND A GIRL)から引かれているようです。ジャン&ディーンといえば、ビートルズの米国上陸までは、サーフィン・サウンドとホット・ロッド・サウンドで人気を博し、ビーチ・ボーイズとともに全米で一大ムーブメントを巻き起こしていたのです。 たとえば、「ハートじかけのオレンジ」のAメロは、デビッド・ジョーンズ(DAVID JONES)の「虹のドリーム・ガール」(Dream Girl)から影響を受けているようです。英国のビートルズに対抗するためにアメリカで結成されたのがモンキーズですが、メンバーのデビッド・ジョーンズがモンキーズ参加の前年にソロでリリースしていたのが、この「Dream Girl」でした。 たとえば、「ハートじかけのオレンジ」では、アメリカで人気を誇った女声コーラス・グループ、コーデッツの「ミスター・サンドマン」(Mr.Sandman)のフレーズが印象的に使われています。音楽史にロックンロールが登場した1955年の前の年、1954年に全米1位の大ヒットを記録したのが「ミスター・サンドマン」です。もともと『Mr.Sandman』とは、子どもの目に砂をかけて睡眠をさそう眠りの妖精のことです。この曲を象徴的にとらえて、「1954年を最後に古き良き時代のアメリカ音楽は眠ってしまった」とよく例えられるのだそうです。 さて。 冒頭で『アンチ・ビートルズ』なんて述べましたが、こうして見渡してみると、「ハートじかけのオレンジ」では、「ミスター・サンドマン」という曲が、海を越えて、時間をこえて、次元をこえて、たとえば、ビートルズとアメリカ勢をつなぐ接着剤のような役割をはたしているのではないか、という気さえもしてきます。 |
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