いきものがかりの18作目のシングル「ありがとう」は、2010年にNHKで放送された連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の主題歌でした。この「勝負曲」のアレンジャーに起用されたのが、本間昭光氏です。歌い出しサビのメロディに絡むストリングスの旋律は、考えに考え抜かれた見事なもので、このサビの8小節が、聴いた者すべての心を掴んでしまうキャッチーさを備えていると言っても過言ではないでしょう。さらにはAメロにつなげるウワモノのシンセ・フレーズやサビ前のショートブリッジ的なフレーズなど、リスナーに感情移入してもらうための「分かりやすさ」に徹したアレンジが、この曲が万人に親しまれるための名ガイド役をこなしていると思うのです。
この「万人に親しまれ、盛り上がってもらうための、ありきたりではないけれども分かりやすいアレンジ」こそが、本間昭光氏が、「ロングバケイション」から学んだ秘密なのでしょう。
いきものがかりの「風と未来」は、2010〜2011年の「新・日産セレナ」のCMソングのために書き下ろされた曲です。大半のシングル曲を手がける水野良樹ではなく、もう一人の男性メンバー、山下穂尊の手による佳曲です。アレンジは、田中ユウスケ、近藤隆史、湯浅 篤、弦一徹(ストリングス)の連合軍。いきものがかりの作品は、島田昌典や松任谷正隆などなど、その曲ごとに最適なアレンジャーが割り振られているのです。「風と未来」では、日本音楽史上、御本家ナイアガラに次ぐくらいの厚く、エコーのかかった、こだわりのカスタネットが鳴り響いています。そこにこだわったリード役は、はたして誰だったのでしょう。
|