#04 「1969年のドラッグレース」

 「以前はロック・シンガーとしてスタートしたということを
 アピールしようと思って。ボクらのミュージシャンとしての
 スタート当時の気分を歌った歌ですね」(大滝)


 「サイダー'75」ではメロディで影響を受けた、ボ・ディドリー(Bo Diddley )に、この曲「1969年のドラッグレース」で大滝さんは、リズムでまた影響を受けているのではないでしょうか。
 「リズムに著作権があれば彼は大もうけしただろう」と言われるボ・ディドリーの独特なビートは、ナイアガラでは「座 読書」でユニークな味つけをして、既に聞かれたものでした。

 サウンドに耳をやると、歌メロ部分での演奏は、ひたすらコードバッキングに徹し、例のビートを刻んでいます。絶妙なタイミングで絡むハンドクラッピングはまた見事です。鈴木茂の奏でる骨太なリード・ギターは、冒頭の大滝さんの意図を十分に体現しているよ
うに思われます。

 はっぴいえんど時代にメンバーでドライブした体験について、以前語られたことがありました。そんな記憶とオーバーラップさせ、ミュージシャンとして『スタートを切った』当時の心持ちを、『カーレース』になぞらえ、「ゴールは霧の向こうさ」と歌う技巧…。もしかしたら大滝さんの方から、この曲のキーワードやコンセプトが作詞者に伝えられたのかもしれません。

 「comlete幸せな結末」のコーナーでも触れたグループ、デイブ・クラーク・ファイブ(THE DAVE CLARK FIVE )の1966年のアルバム「TRY TOO HARD 」には、ボ・ディドリー・ビートが聴かれる曲「I KNOW 」があり、「1969年のドラッグレース」のエッセンスになっているようです。また、「1969年のドラッグレース」のイントロやエンディングで聞かれる印象深いピアノのフレーズはまた、同アルバムのタイトル曲である「TRY TOO HARD 」から意識的に引用されているようです。
 
 「いっしょにやってきた松本との共通の思い出もあるし、
 それは細野や鈴木茂も同じではなかろうかと思って…。
 同時代人へのメッセージであります」(大滝)


 メンバーでドライブした時の思い出の車って、「TRY TOO HARD」のアルバム・ジャケットみたいだったんでしょうか…。



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