#05 「レイクサイド ストーリー」

 「長編物をひとつやろうとかと思って作った曲です。
  A、B、Cと展開していって、そのA、B、Cに
  関連がないものを」(大滝)


 「レイクサイド ストーリー」は、メロディが三部構成になっているところが特徴的です。
フィル・スペクターがプロデュースしたロネッツの名曲「YOU BABY」も、曲の成り立ちがAメロ、Bメロ、Cメロというふうに三部構成になっています。この曲の前奏からヒントを得て、大滝さんは「レイクサイド ストーリー」のイントロ部分で、バスドラムを印象的に『ドドッ、ドドッ … 』と鳴らしているのだと思います。

このロネッツの「YOU BABY 」を気に入り、ファースト・アルバムでカバーしていたグループが米国にいました。本サイト「スペクター・フォロワーズ」のコーナーでも紹介しているラヴィン・スプーンフル(THE LOVIN' SPOONFUL)が、その人達です。

 彼らが1967年に4枚目のアルバム「EVERYTHING PLAYING 」を制作中に、スペクターの門下生で、元モダン・フォーク・カルテットのジェリー・イエスターがメンバーとして途中加入しました。
 アルバム中の「彼女はミステリー」(SHE IS STILL A MYSTERY)という名曲も、やはりAメロ、Bメロ、Cメロという具合のプチ三部構成になっており、ジョン・セバスチャン風のウォール・オブ・サウンドの作品でした。

 この曲は、ロネッツの「YOU BABY 」をヒントに書かれた曲なのではないか、と推測されます。

実は、大滝さんもその点を見抜き、スペクター・フォロワーズとして同胞の思いをもったのではないか…。何気にこの曲「彼女はミステリー」も「レイクサイド ストーリー」のエッセンスになっているのではないか、と思えるのです。
私の記憶が確かならば、「彼女はミステリー」は、近年に再編集して放送されたラジオ番組「ゴー!ゴー!ナイアガラ」内でも、番外の曲として、そっとかけられたものでした。
 そして、私の記憶が確かならば、大滝さんの変名『ちぇるしい』は、「スプーンフル・ファンクラブ」、「ジョン・セバスチャンとフォークロックを守る会」の女の子たちが名づけたものです。

「レイクサイド ストーリー」では、大滝さんが、中田佳彦さんと1968年当時につくった共作曲を思い出に残そうと、そのコード進行を曲中に用いています。ちょうど「やーがて真冬が湖を〜」以下のいわゆるBメロの部分です。
 中田さんは、大滝さんがはっぴいえんど結成前に共に音楽活動をした友人であり、本サイト内「comlete幸せな結末・研究編、その5」でも、ふたりの重要なエピソードに触れています。

このマイナーに転じる「レイクサイド ストーリー」のBメロの部分には、ニルソン(NILSSON )の「ONE 」(1968年発表)という曲を感じるのです。彼ニルソンは、フィル・スペクター制作の有名曲、「THIS COULD BE THE NIGHT」の作者でもあります。翻ってスペクター門下生のジェリー・イエスターは、モダン・フォーク・カルテット時代にその名曲を歌った当事者でした…。
 さすがにこれは、出来すぎた話かもしれませんが、必然は偶然の仮面を被ってあらわれる…?

シンフォニックにも思える「レイクサイドストーリー」も、大音量で聴くと、センチメンタルなロックであることに気づきます。サビとエンディングの部分は「サイダー'83 」と相似です。かつてのオリジナル・バージョンでしか聞けない「行って戻ってくる大エンディング」は、この曲に対して抱くナイアガラファンの各々の感情を、多様にしているようです。



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