SEKAI NO OWARI


眠り姫

 SEKAI NO OWARI の「眠り姫」は、万人ウケするキャッチーな傑作です。モチーフとなるメロディはポップで、どこかで聞いたことのあるようなエバーグリーンな旋律。一方、そのモチーフを巧みにテンポ・チェンジ、リズム変化させながら聴かせることで、リスナーはまるでディズニーのアトラクションに乗って夢の世界に誘われるような、高揚感を味わえるのです。
 彼らがデビュー前のコピー・バンド時代に演奏した曲は、BUMP OF CHICKENの「プラネタリウム」、銀杏BOYZの「銀河鉄道の夜」、the band apart の「星に願いを」(ディズニーのカバー)、サザンの「真夏の果実」(小林武史アレンジ)など。その曲がどうして好きなのかをひとつひとつ分析したうえで、ファンタジーでロマンチックでキラキラしているという共通項が、彼らのオリジナル曲に活かされているのだそうです。
 「眠り姫」のジェット・コースター的な曲展開への新鮮な驚き、それは「君は天然色」を聴いたときのそれに匹敵するものです 。



SEKAI NO OWARI
花鳥風月(シングル「INORI」収録)


 壮絶な過去を持つボーカル、深瀬慧の書く歌詞は、独特な闇世界を内包しています。その反動として、ひたすら曲の旋律は見事なまでにメロディアス。それが世界の終わり、セカオワの曲の特徴です。メジャー・シングル第1作となる本作では、深瀬の幼なじみでピアノの藤崎彩織が歌詞を手がけたことで、素晴らしくキャッチーでありながら毒気の抜けた「セカオワ入門作」に仕上がっています。
 メジャー各社による争奪戦の末、セカオワはTOY'S FACTORY へ。彼らが学生時代に親しんだ、ゆず、BUMP OF CHICKEN 、Mr.Childrenらがトイズ・ファクトリーに籍を置いています。スペクター・サウンドを愛聴する「ゆずの」寺岡呼人、ナイアガラ・サウンドを敬愛する「Mr.Children の」小林武史らを経て、世界の終わりは、ナイアガラ・チルドレンならぬナイアガラ・グランドチャイルドと呼べそうです。


世界の終わり
天使と悪魔

 世界の終わり、略してセカオワの深瀬慧のボーカルは天賦の声質だと思います。キーは高くないのにクールかつ伸びやかで、バックのサウンドの低音としっかり乖離して聞ける稀有な成分の声主です。このボーカルの特長こそが、バンプ・オブ・チキン・チルドレンと呼ばれる所以でしょう。これは、レコーディングの際に抜群のマイク通りの良さを誇る大滝詠一さんの声に相通ずるものがあると思います。インディーズ・シングル第1弾の本作でも、悪魔的な内容を清々と歌い切るそのボーカルが存分に味わえます。
 作詞作曲でも才能を発揮している深瀬慧は、決して音楽通、サウンド・マニアではなく、「歌詞とメロディが一番良く聴こえるにはどうしたらよいか」を心がけ、「自分のお婆ちゃんや妹にも『良い』と思ってもらえるものを追求」するのだと言い切ります。「ザ・ベストテン」に出ることを目標に大衆ウケするポップスの創作を試みた大滝さんの「ロングバケイション」の精神に、大いにつながるものだと思います。





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