世界の終わり、略してセカオワの深瀬慧のボーカルは天賦の声質だと思います。キーは高くないのにクールかつ伸びやかで、バックのサウンドの低音としっかり乖離して聞ける稀有な成分の声主です。このボーカルの特長こそが、バンプ・オブ・チキン・チルドレンと呼ばれる所以でしょう。これは、レコーディングの際に抜群のマイク通りの良さを誇る大滝詠一さんの声に相通ずるものがあると思います。インディーズ・シングル第1弾の本作でも、悪魔的な内容を清々と歌い切るそのボーカルが存分に味わえます。
作詞作曲でも才能を発揮している深瀬慧は、決して音楽通、サウンド・マニアではなく、「歌詞とメロディが一番良く聴こえるにはどうしたらよいか」を心がけ、「自分のお婆ちゃんや妹にも『良い』と思ってもらえるものを追求」するのだと言い切ります。「ザ・ベストテン」に出ることを目標に大衆ウケするポップスの創作を試みた大滝さんの「ロングバケイション」の精神に、大いにつながるものだと思います。
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